Uber(ウーバー)は、アメリカ発の配車アプリで、タクシーに比べて便利で低料金かつ安心できるサービスとして人気を博したサービスです。
国によって展開するサービスが異なり、日本ではハイヤーのUberBLACKとBLACK VANのみを展開しています。世界的に最もポピュラーなのは、相乗りのUberPOOLと貸し切りのUberX(一部国ではUberPOPという名称)です。
UberXやUberPOOLのドライバーは、商業用の免許(日本で言う第二種自動車免許)を持っている必要がなく、Uberに登録をして承認された一般ドライバーが、アプリで配車予約をした乗客を乗せて、指定の場所まで運転します。いわゆる「白タク」の配車サービスです。
本記事では、Uberがなぜ海外で流行し、日本ではサービス展開ができなかったのか、既存のタクシー業界との関係性や、日本での独自の展開について解説していきます。
海外でUberが流行した理由
既存のタクシーよりも安く利用ができる
Uberは、既存のタクシーよりも便利かつ安く利用できることで人気が出ました。安く提供できる理由は、ドライバーが専属のタクシードライバーではなく、一般のドライバーがUberに登録をし、アプリの指示に従って運転をしているからです。
カーシェアの形で言うと「Anyca」や「dカーシェア」など個人間カーシェアリングがそれに当たります。
Uber側は利用料金の一部からマージンを取ってドライバーに還元するだけなので、車の維持費や保険などを負担する必要はなく、タクシー会社よりもローコストで運営することができています。そのため、過酷な労働を懸念する声もありますが、Uberなどの配車アプリだけで生計を立てて暮らしている人も多くいます。
ドライバー・乗客のレビュー制度がある
Uberが一般的なタクシーよりも信頼できると言われている理由として、「レビュー制度」が挙げられます。
乗客がドライバーを評価するシステムで、5段階で評価をすることができます。もちろん、乗客もドライバーから同様に評価されています。
対応やサービスが良ければよいほど、優秀なドライバーとして乗客からも表示されますが、評価が4.5を下回るドライバーは、登録が解除される可能性が高くなります。
それでもまれにUberによる事件や犯罪も起こっていますが、何か問題があった場合はアプリを通してUberに報告することができるため、言葉が通じない異国の地でも自分の言語で問い合わせすることができます。
運賃やルートが乗車前から決まっているので安心できる
Uberは、事前に配車場所と目的地を指定するシステムであるため、配車時に運賃が決まります。雨の日など需要が高まっている時はレートが上がり、普段の1.5~3倍の料金になる場合もありますが、その場合も事前に通知がされます。
また、ドライバーはUberのアプリ(Googleマップのナビと同システム)に従って運転する必要があり、ルート変更をするのにも乗客の承認が必要になるため、遠回りさせられて高額な運賃を請求される心配もありません。
以上のことから、現地の人だけではなく旅行者にも安心してタクシーとして利用することができるため、ヨーロッパ・アメリカを中心に人気が出ました。
トラブル時の対応も迅速
たまに、ドライバーが時間になってもいなかったり、なにかしらのトラブルが発生することがあります。
実際に筆者がオランダ・アムステルダムでUberを利用した際も、いつまで経ってもドライバーが来ずキャンセルをしたら、初乗り分がカードから引き落とされたトラブルがありました。
予約画面から、料金が過剰請求された、ドライバーが来なかったとアプリ上から問い合わせをすると、すぐに初乗り分の料金が返ってきました。問い合わせ項目を選んだだけなので、英語やオランダ語は一切使わずにトラブル解決することができ、海外でも安心して利用できるなと感じた瞬間でした。
Uberで起こるトラブル、懸念事項
Uberのドライバーはレビュー制度があり、あまりにもレートが低すぎるとドライバー登録が強制解除されるようになっていますが、それでも悪質なドライバーはまれにいるようです。
最近では、乗客に無断で車内の様子をネット上にライブ配信していたケースや、乗客を暴行するケース、さらにはドライバーが乗客を殺害する事件も起こっています。
一方で、目新しいサービスだからこそ大々的に報じられている側面もあり、実際は一般的なタクシードライバーが起こすトラブルも多く発生しています。
凶悪犯罪など大きな事件を除いても、ボッタクリをするタクシードライバーがどこの国にもいることを考えると、システムが整備されたUberの方が安全と言えるのではないのでしょうか。
もちろん、Uberの参入に反対している日本のタクシーでも、女性の乗客に対する性的嫌がらせや、ひき逃げ事件、遠回りによるボッタクリなどがあるため、タクシー業界が安全性を懸念するのもおかしな話だと言えます。筆者自身も、悪質なタクシードライバーに何度も出会いましたし、日本のタクシーがUberと比べて特段に優れているとはあまり思えません。
最近では、Uberの企業体制そのものに問題があると批判されており、アメリカでは他の配車アプリと比べてもトラブルが多いと言われているため、最近ではUberよりもライバルのLyft(リフト)の方が人気になりつつあるようです。Lyftは今のところ北米のみでサービス展開がされています。
日本でUberXがサービスインできない理由
Uberは日本でもサービス展開していますが、現時点ではUberBLACKというハイヤーのサービスに限られます。一部地域で実証実験をしているサービスも、地元のタクシー会社と連携したサービスです。
日本で白タクサービスであるUberXや相乗りのUberPOOLができないのは、タクシーとしての営業許可がない白タクの運行を禁止していることが一番大きな理由です。
また、Uberの運賃は時間などによって異なり、雨の日などの需要が高まっている時間帯は、2~3倍に跳ね上がるときもあります。そのような価格設定自体も、道路運送法により許可されておらず、タクシーも自由に料金を変えることができません。
法律が変わればすべてが丸く収まりますが、政治家との結びつきが強いタクシー業界の反発が強く、「雇用に悪影響をもたらす」「白タクは危険であるため反対」というもっともらしいことを言って業界の既得権益を守ろうとしています。
アンチUberは日本だけではない
このような話は日本に限ったことではなく、台北、ロンドン、パリ、アムステルダムなど、他国の都市でもUberのサービスが行政によって一時禁止されたことがありました。つい最近までドイツ国内ではUberが禁止されていましたが、解禁された今でもタクシー業界からの反発は強いようです。
特にアジア圏でのUberの勢力は弱く、中国でのUberの事業は滴滴(ディディ)に売却、東南アジアでの事業もGrabに売却し、既存のタクシーも混ざった独自のライドシェアサービスが展開されています。
韓国では、Uberが参入したことで、タクシー業界がカカオトークでお馴染みのカカオと手を組み、シェアが95%にも及ぶタクシー配車アプリが利用されるようになりました。
日本の配車アプリの今後
日本もタクシー業界が強いアジア諸国同様に、UberXのような白タクサービスを展開せず、Uberのような操作感で簡単にタクシーを配車できるアプリが主流になっていくと考えられます。
NTTドコモは国内配車アプリ最大手の「全国タクシー」を運営する日本交通に出資をし、DeNAは神奈川県タクシー協会などと共同で立ち上げた「タクベル」というアプリを展開するなど、タクシー配車アプリの勢いが急速に増しています。
さらに、Uberを含む世界中のシェアライドサービス、配車サービスに出資しているソフトバンクは、中国の配車アプリ最大手の滴滴(ディディ)と手を組み、日本でタクシー配車サービスを展開しようとしています。中国で主流な決済方式であるWeChat Pay、AliPayにも対応する予定で、訪日中国人にも利用しやすくなるようです。
しかし、電子マネーの乱立と同様に、他社と協力せずに自社で独自のサービス展開をしてしまい、結果的にユーザーの混乱を招いてしまう日本企業の悪しき風習が、タクシー業界でも既に起ころうとしています。
シェアが圧倒的な「全国タクシー」を提供している日本交通と組みたくないというプライドから、国際自動車や日の丸交通は独自のアプリを展開する準備を進めています。
まとめ:日本の独自路線も悪くはないが…
筆者は、海外旅行の際には積極的にUberを利用しています。土地勘がなくても乗る前に料金が分かること、ドライバーのレビュー制度、そしてタクシーに比べて料金が安いため、場所によっては公共交通機関と同じ感覚で利用しています。
「日本のタクシーはサービスが良い、Uberは問題点が多い」とタクシー業界は反発していますが、個人的な意見としては、タクシーの方が安心して利用できないように感じます。遠回りをして料金を多く稼ごうとする悪質なドライバー、態度の悪いドライバーなどに何度も当たったこと、そして降車まで具体的な料金が分からないため、極力国内外のタクシー利用は避けるようにしています。
タクシー業界がUberに対抗して、使いやすい配車アプリを展開する流れが起こっていますが、ドライバーのレビュー制度や、予約・配車時に運賃が確定するシステムなど、根本から変えて行く必要があるように感じています。
また、東京がUberに対応していないことに驚く訪日外国人も少なくありません。日本でタクシーを配車するためにわざわざ日本独自のサービスに登録して利用する人がどれだけいるのでしょう。ソフトバンクと中国の滴滴の提携のように、普段母国で利用しているアプリで日本のタクシーの配車ができるサービスこそ、訪日中国人の求める「おもてなし」なのではないでしょうか。
仮に、日本でUberXやLyftのようなシェアライドサービスが合法化されたら、料金次第ですが私は積極的に利用すると思います。それだけ安心できる優れたサービスだと利用する度に感じていますし、アプリ上だけで配車、目的地の設定、そして支払いまで完結するため、言葉を一切喋らなくても目的地まで行けてしまう点は、外国人にも非常にありがたいものです。
もしも海外旅行をする機会があったら、一度シェアライドサービスを利用してみることをオススメします。